僕らの色の行方
[入院患者A](1/8)
外は雨が降っている。
かれこれ朝起きた時から3時間降り止むことのない雨。
10時の血圧測定の時間でついさっき看護師さんが来た。
起きたのは7時。
10時のおやつと同じ雰囲気で僕に毎日行われる血圧測定。
仕方ない、僕は病院に入院する入院患者の1人、入院患者Aだから。
僕は、病気だ。
脳だったか心臓だったか臓器だったか骨だったか。
どこが痛くてどこが悪いかを忘れるぐらいに僕は長い間入院している。
4人一部屋の入口から見て左奥の窓側を長いこと陣取っている僕。
同じ部屋の人は何人も入れ替わった。
若い男、幼い男の子、おじいちゃん、おじさん、性別上男といわれる多種多様な男が入れ替わり同じ部屋の人になった。
多すぎて名前なんて覚えてない。
いや、覚える気がなくなった。
何人もの人と同じ部屋になったんだから。
もう僕はこの病院の幽霊なんじゃないか。
そう思う時がたまにある。
看護師も新しい人がころころいれかわる。
看護師の名前を覚えることをやめた。
退院して人と同じように生きたいと願うこともやめた。
退院してもすぐに風邪をひいてこじらせて病院に逆戻り。
僕は水槽の中の魚と同じ。
酸素のある水の中からひとたび出れば弱ってしまう。
僕の居場所は病院の4人部屋の左奥の窓側のベッド。
僕は、入院患者Aの仁科(にしな) ひまわり、たしか17歳。
ひまわりの由来、生まれた時から病気だったから、ひまわりの花のように強く元気にとかなんとか言われた気がする。
そんなに興味なくてちゃんと記憶していない。
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