浅葱色
[壬生浪士組](1/22)
312

会津藩主、松平容保から返事があり

残留浪士組は
会津藩お預かりとなった。


この日は
祝いの宴が開かれ

屯所で呑めや食えやの大騒ぎとなった。


斎藤は、屯所を出て
門の前で一旦足を止めた。

……千夜。居るのだろう?

少し話しがある。

ついてこい。」


言い放ってから
斎藤は、また歩みだした。

千夜は女である故に
試衛館の仲間の前には
普段は姿を現さない。

山崎と同じ様に
黒装束を身に纏った千夜は

屋根の上でクビを傾げた後、
斎藤の後をおったのだった。



ついた先は
河原……


歩みを止めた斎藤


……珍しいね。

はじめが、私に話しがあるなんてさ。」



「悪いか?」


「別に悪く無いよ?

で?

話しって?」


「お前は、

本当に、土方さんに会う前の

記憶が無いのか?」


……

何?急に……


「あるのか、ないのか、
どちらかだ。」


……無いよ。
それが、何?」


「思い出したいとは

思わ無いのか?」


「わからない。

……怖いのかも知れない。

思い出すのが



……そうか。」


川が流れる音が
いやに近く聞こえて

私は、はじめに背を向け

暗闇で見えないのに
川を眺め、空を見上げた。

場違いだとは思いながらも

星が流れない様に祈る


これは、すでに日課となった行動


「星は、流れぬ。」

「え?」


コレを

お前に渡す様に言われた。」


斎藤が差し出したモノを見て
千夜は涙を流す。

斎藤が手にしていたのは
一本のクナイ


……


ずっと安否がわからない

彼の所持品だと

すぐにわかった。

「あいつはーー」

……無事、なんだね。

よかった。」


「何故、わかる?」

斎藤の手にあったクナイを
千夜は受け取り

柄に巻いてある紐を斎藤に見せる


「青い紐が巻かれている。

赤、青、黒、黄、紫

観察は色で相手に知らせる。


まぁ、自分の好きな色をただ巻いてある可能性もあるけど

私に渡して欲しいって言ったなら

丞は無事って事。」

そう言って
千夜はクナイを抱きしめた。


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