正真正銘チクり女。 EIGHT(1/15)






「あ、あの子、例のアレでしょ。
ずっと本性隠してた女。」

  

「名前なんだっけ。
森山美鈴、じゃなかった?」



「青山さんとか神崎さんもあの子の本性知ってたらしいよ。
それが証拠だよね。」  



「えー、ってか大人しい子を演じて裏では性格悪い女らしいよ。
あとずっと色んなことチクリまくってたのもあいつだって。

チクリ女。」



「性格も悪いの?
しかもチクリ女?
うわなにソレ関わりたくない。」





廊下を歩けばみんながあたしを見てヒソヒソと話し始める。

電車で誰かと会えばこっちを見てニヤニヤしてくる。  


  
あたしはずっとこの本性を隠してここまでやってきた。
それが全部無駄になったの。




教室に入るのが億劫で仕方ないのに。



ガラララ



あたしは静かにドアを開けた。 
すると一瞬静かになって、みんながこっちを見ながらまたヒソヒソと話し始める。
  

うるさいうるさい。


全部聞こえてんだよ。


 
机に鞄を置き、教室から逃げるように出て行った。
こんな教室いたら反吐が出そうだ。





一人で歩いていると後ろから名前を呼ばれた。



「森山っ……………!!!!」



振り返ると小林くんが息を切らして立っていた。


何。

関わらないでよ。



今一人になりたい気分なんだから。




「………本当に…本当に今までの森山は嘘だったのかよ……っ」



何、なんかのドラマ?
何が今までの森山は嘘だったのかよ、だよ。




「…………そうだよ。
全部嘘。
あんたと出かけた時のあたしも出会ったときのあたしも。
ぜーんぶ作ってたの。

もう、あたし大変だったんだよ?
笑い堪えるのに必死でさぁ。
あんたもまんまと騙されてるしね。

ふふ、面白かったわ。
どうもありがとう。」




…………これだけ言えば怒るよね。


嫌われたほうがマシだっつの。




「…………嘘だ。」



「は?」






「嘘だ!!!!
森山、それ本気で言ってないだろ?!
俺の知ってる森山はそんなこと言わない!!!!

表だろうが裏だろうがそんなこと絶対に言わないッッ!!!!」





「…………な……に言ってんの………
嘘じゃないって言ってるの。

これ以上何もないんだから…。
大体「………好きだ…………」」






………………………………は?






「……………何が……」



「森山のこと、好きなんだ……」





「…………は、はは……
何言ってんの。
冗談もほどほどにしなよ。」



「裏でも表でも関係ないっ!!!!

好きなのには変わりないから。」






…………おかしい。




馬鹿じゃないの?



なんかのドラマの真似でもしてるの?


それともドッキリ?




……でも………







嬉しいって思ってしまったあたしもよっぽど馬鹿だ。



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