それはステキな恋の魔法
[本物のお姫様](1/12)
思えば、人生で初めてかもしれない。

王史に対して酷い発言をしてしまった。

『顔を見たくない』などと自分が言われてしまったら立ち直れないほど傷つくに違いない。

それでも… …


キスしたいって思ったんだし好きってことでいんじゃねーの?』


特に感情もなく、とってつけた言い訳のように言った王史の言葉に怒りを感じた。

こちらはあんなにも… …
ドキドキしてしまったというのに。


ーー私ばっかり
ドキドキさせられて、振り回されて


きっと王史はその様子を見て、面白がっているだけなのだ。人の気も、知らないで… …


書庫で王史とケンカをしてから1週間。

特に王史から連絡があるわけでもなく、淡々と日常は過ぎて行った。

王史はどう思っているのか。
何を考えているのか。

それとも何も感じていないのか。


きっとまたどうせ、悶々と1人考えてしまっているのは姫乃だけで


「やだぁ!雨が降ってる!」

そんな女性の声に、はっとする。

終業後、帰宅しようと外に出たところで突然に雨が降り出したようだ。

朝から天気予報でも、にわか雨にご注意と言っていたため、バッグに忍ばせておいた折り畳み傘を取り出した。



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