それはステキな恋の魔法
[キス、したことある?](1/13)
宴会場は20代〜30代の社員を中心に、総勢100人を超えると言っていたか。
おそらくここを出会いの場として訪れている社員も大勢いるのだろう。
果敢にも、王史の傍にも酌の列が出来ようとしていたところを、リオンが上手く阻止してくれた。
「… …」
先程の姫乃の、今にも泣き出しそうな顔が…頭に浮かぶ。
昔から、姫乃の困ったような戸惑った顔はよく目にしてきた。
大概、王史を前にするとそれで…
我ながら性格に難があるとは思うが、あの姫乃の表情は…ツボだったりする。
ただ、先程のそれは違っていて… …
「あれ〜?花咲さんどこ?」
ふいに、女子社員のそんな声が耳に入る。
「姫ちゃんなら、帰りのお土産の件で越智さんに頼まれごとしてたから、受付の方じゃないかなぁ?」
「越智さん?また花咲さんに押しつけてんの!?」
「ね?自分はあっちで男と飲んでんのにねぇ〜!
姫ちゃんが男に人気だからって、ひがみでしょ?」
ーー・・・あ〜…そーゆー… …
無造作にその場から立ち上がる王史に、隣のリオンがコソッと声をかける。
『れ?王史どこ行くの?』
「…トイレ」
『ふーん…ちゃんと謝ってこいよ〜♪』
「・・・分かってんなら聞くな」
どうせ、あのお人好しで他人の頼みを断れない、グズ姫のことだ。
同僚からの頼みをホイホイと引き受けて… …
困っているに違いない。
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