それはステキな恋の魔法
[いばら王子に恋の魔法を](1/9)
姫ちゃんに替わるわ♪と、これ以上にないほどの上機嫌な笑顔で、リオンが病室を後にする。
姫乃には迷惑をかけたに違いない。
ーー…つーか、ダッサ… …意識飛ぶとか…
姫乃と顔を合わせるのが気まずい。
ここは謝るべきか…
それとも、お礼を言うべきなのか?
姫乃はどんな表情でやってくるのだろう。
姫乃と顔を合わせて、自分は…
冷静に、会話ができるのだろうか。
などと考えを巡らせている間に、コンコンコン…と控えめなノック音と共に…姫乃が恐る恐る、顔を覗かせた。
「…王史くん…気分は、いかがですか…?」
うつむき加減の姫乃の表情は見てとれないが、そのか細い声に元気はない。
「…まぁ、良くはない…」
つい、無愛想にそんな返答をしてしまった。
実際今しているように、身体を起こして腰をかける体勢でいると、頭の奥がふわふわと船に酔ったような気持ちの悪さを感じる。
「… …」
それに対して姫乃からの返答はなく、ベッドのすぐ傍にその存在を感じた。
そして…
「…っく…ふ 、ぇっ… …」
そんな震える声に、視線を姫乃に向ける。
ひとしきり泣いた後なのか、溢れてくる涙が伝う目元はすでに赤くかすんでいて…
ーーヤバ…!泣いてる… …
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