[温かな雨](1/13)
温かな雨



一瞬、時が止まった気がした。
あたしと三島だけが。

あたしの声に振り向いた三島
信号が青なので行き来する中
あたし達だけが止まっていた。

そして、誰もいなくなり、信号が赤に。
ハッとして、三島があたしを引っ張って
慌てて信号を渡り切る。

杏奈、何でここに……。」

そう言う三島の胸に飛び込むように、
あたしは三島に抱きつく。

「瑞樹沢山傷付けてごめん
今日退院して、アパートに帰ったの。
瑞樹、部屋の手入れとか花とか
ずっとしてくれてたんだね。」

泣きながらそう言って、

「退院したら直ぐに会いに行こうと思ってた。
早くこの気持ち伝えて謝ろうって思ってた。
そしたらあんたは来てくれてた
ありがとう、瑞樹好きだよ。
前を向いた時、瑞樹を好きだって気持ちが
自然に湧いてきた。」

と続ける。明日にでも三島の地元に
行こうと思っていたのだ。

杏奈、アパート1回戻ろか。」

三島はそう言ってあたしの手を握って、
直ぐにタクシーをつかまえた。

タクシーの車内、あたし達は無言で、
アパートに着くと三島は足早に部屋に向かう。



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