恋
[温かな雨](1/13)
温かな雨
一瞬、時が止まった気がした。
あたしと三島だけが。
あたしの声に振り向いた三島…
信号が青なので行き来する中
あたし達だけが止まっていた。
そして、誰もいなくなり、信号が赤に。
ハッとして、三島があたしを引っ張って
慌てて信号を渡り切る。
「…杏奈、何でここに……。」
そう言う三島の胸に飛び込むように、
あたしは三島に抱きつく。
「瑞樹…沢山傷付けてごめん…。
今日退院して、アパートに帰ったの。
瑞樹、部屋の手入れとか花とか…
ずっとしてくれてたんだね…。」
泣きながらそう言って、
「退院したら直ぐに会いに行こうと思ってた。
早くこの気持ち伝えて謝ろうって思ってた。
そしたらあんたは来てくれてた…。
ありがとう、瑞樹…好きだよ。
前を向いた時、瑞樹を好きだって気持ちが
自然に湧いてきた…。」
と続ける。明日にでも三島の地元に
行こうと思っていたのだ。
「…杏奈、アパート1回戻ろか。」
三島はそう言ってあたしの手を握って、
直ぐにタクシーをつかまえた。
タクシーの車内、あたし達は無言で、
アパートに着くと三島は足早に部屋に向かう。
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