夢屋

[私の夢を買ってください⇒1/6]





私は、目の前の状況に驚愕しながら見ていた。



「え、昴くんって同じ高校なの?!」



そう聞くと、可愛らしい笑みを浮かべて、うんと頷いた。知らなかった。きっと友だちたちは知っていただろうが、色恋沙汰よりも借金返済が常に頭にあった私はそんなこと気にかけてなくて。だから、今朝起こしに来た昴くんの制服が同じなのを知って驚いた。


驚いた。と軽く書けられるものじゃなくて腰を抜かす。こんな美少年を知らなかった私の女子力のなさにも驚きを隠せない。



「ついでに同じ学年だよ。」



昴くんは更に私に追い打ちをかける。そんな、バカなと叫びたい気分だ。もともと他人に無頓着だったけど、ここまで無頓着だともう、申し訳なくなってしまう。


少しだけ気落ちした私に昴くんは、気にしなくていいよ!と言って私の頭を撫でてくれる。本当いい人。



「ありがとう。」



そう言うと、昴くんは満面の笑顔をくれる。なんて眩しい笑顔なのだろう。きっと心からピュアな人なんだろうなぁ。



「ほら。学校行く準備出来たならご飯食べるぞ。」



そう言って3人分の和食がそれぞれセットされる。こんなまともなご飯食べるの何ヶ月ぶりだろうか。最近水だけで過ごしたり、友人の残飯を貰ったりして、惨めな生活していたから。


昨日から香さんお手製のご飯を口に運びながら幸せを噛みしめていた。しかし、女子力高いなぁ、香さん。見た目良し、お金持ちで(まあ、会社は怪しいけど)、家事全般を卒なくこなす。


こんな人よく世の中の女性は放置しているよ。もしも同じ学校で借金とかない平凡な女子だったら絶対に香さんに恋をしていただろうに。


ああ、でもこんな会社立ち上げると聞くと流石に引くかもしれない。それだったら昴くんなのかなぁ。いや、昴くんは香さんの助手だ。どちらにしても残念系イケメンなんだなぁ。


そんな、思考回路を回しながら私は香さんが作ってくれた味噌汁をお腹に流し込んだ。どんなに残念系イケメンであっても料理の腕は確かで、お袋の味とはこんなものなのかなぁとか思ったりもした。







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