5day(1/5)
*
その日はユタのくれた麦わら帽子を被って外に出た。
日差しが少し遮られて、眩しかった世界に影が落ちる。
でもそれすらも、眩しいと思えた。
「今日の遊園地、ここに行こうか」
ユタはそう教えてくれるけれど、どこにどういうものがあるのかわからないわたしには、どこでもよかった。
正確には、ユタがすすめる場所ならどこでもよかった。
だって、きっとどこもいい場所だから。
「楽しみだなあ」
胸が躍る。
「遊園地、行ったことない?」
「ないよ。
ユキさんはあんまり好きじゃないみたいだから」
それだけは知っていた。
遊園地の存在を知ったわたしが行きたいと言っても、ユキさんは遊園地が苦手だと言っていた。
一人で行くのは寂しいと思ったわたしは、結局遊園地に行くこと自体を諦めた。
いつか、誰かと行けると思って。
だから今は、あのとき一度諦めておいて良かったな、と思う。
今になってユタと行けるから。
「ユキさん?」
ユタが、ふと首を傾げた。
聞いたことない名前に、でも聞いたことあるような名前に不思議そうな顔をしている。
「うん、わたしと一緒に暮らしてたの」
「……その人、マリーのこと探してるんじゃない?」
……ああ、そうだよね。
たしかに、そうだね。
「多分、いや絶対探してるとは思うけど、わたしはまだ帰りたくない」
わがままだってわかってる。
それでもまだ、彼と繋いだ手を離したくなかった。
一度離してしまったら、もう二度と掴めない気がして、不安になる。
「それなら、行こうか」
わたしの不安を拭うように、ユタはわたしの手を掴んで引いてくれた。
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