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下着だけを身に着けたレティは、すぐに黒船で見つかった。甲板から離れた上空に浮いている。
知らせを受けたアイトールが甲板に走って入ってきた。
「船長!ここからでは届きません!」
「チッ」
レティは空を見上げ、スッとゆっくり上へ昇っていく。
「私には……あの人だけ……」
意識か無意識か。レティはうわ言のように呟きを繰り返す。
「逃がさんぞ、歌姫!」
アイトールは口を開けて舌をベロリと出した。そこに小さな魔法陣が浮き上がり、足元にも同じ模様の大きなものが出た。紫色の光が出て、アイトールが唇を舐めた後に叫ぶ。
「カメレオン!」
息を吸い込み、吐き出すと毒が含まれているのかと勘違いするような紫の煙が吐き出される。
それは大きな生物を象り、クルクルと回転してカメレオンが出てくる。カメレオンはマストに降り立った。
「歌姫を舌で捕らえろ!」