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「こんにちは」
鈴のなるような声での挨拶が聞こえ、営業前の酒場のドアが空く。カウンターにいた店主が顔をあげた。
日傘をたたみ、日除けの帽子を取って壁にかけた少女が此方を向いた。
アプリコットブラウンの艶やかな髪はクセで緩やかに波打ち、背中の半ばまである長さのそれが細い肩を川のように流れている。
瞳の色は深い藍で、ラピスラズリを思わせる。全体的にやや白さの強い肌。
普通なら暑い外の影響で上気するはずの頬はあまり血色が良くなく、細い身体のラインも手伝って弱そうに見えた。
「また怒られたんだって?レティ」
「はい……」
レティと呼ばれた少女――レティアーナは、店主に苦笑いを返した。