BLEACH
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「どこ行こうかな。
日曜日ってこの時間結構閉まってんだよな。」

お兄ちゃんは歩きながら私を見る。

「もっと大人っぽい服にすれば良かった。
なんか俺捕まりそうなんだけど。」

ーーそれはあるかも。

私残念な童顔だし。

お兄ちゃんは《JEKYLL and HYDE》の近くの蕎麦屋さんに連れて行ってくれた。

かなり古びたお店でとても綺麗とは言い難い。

何故かテーブルで寝てるサラリーマン風のおじさんがいる。

『さっちゃん今日は可愛い子連れてるね。』

腰の曲がったおばあちゃんがお水を持ってきてくれた。

「おばちゃん、こいつ客じゃねぇからお世辞言わなくていいよ。」

『あら、もしかして彼女?』

「だから、気ぃ遣わなくていいって。妹だよ。」

『あ、そうなの?』

可愛い子はお世辞で彼女は気遣いなんだ。

つまりーーどっちもホストとしてのお兄ちゃんをたてるための言葉だったんだ。

この街の住民は住民総出でお客さんに夢を与えてくるらしい。

なんて恐ろしい街だろう。

『さっちゃんに妹がいたとはね。』

「似てねぇだろ。」

何を言いたいかは分かってる。

少し怒ってお兄ちゃんを見つめたら、おばあちゃんは笑いだした。

『ーー?』

『その表情。
さっちゃんそっくりじゃない。』

どの表情のことを言ってるんだろう。

「さすがに傷つくよそれは。」
言いながらお兄ちゃんはメニューも見ずに勝手に注文をする。

常連なのかな。

おばあちゃんはビール片手に私達の隣に座ってあれやこれやと話をしだす。

なんて言うかーーThe お母さんて感じ。

お兄ちゃんも楽しそうに話してて、結局お蕎麦一杯で2時間近くお店で過ごした。





また《JEKYLL and HYDE》に戻るとさっきよりお客さんが増えてた。

ケイさんがカウンターの端を開けててくれたらしく、私達はそこに座った。

新しいドリンクを飲みながらお客さんのゲームを見てたらドアのベルが鳴った。

『おじゃましまーす!』

夜のお仕事帰りだろう。
私服にセットされた髪の可愛い女の子が入ってきた。

「あれ?カナ?」

お兄ちゃんが声をかける。

やばい。お客さんだろうか。

『サツキくん!久しぶりです!
ケイくんもー!』

にこにこ笑いながら近づいてくる。

『あれ?アオイちゃん?』

『ーーえ?』

この子は私を知ってるらしい。

『妹のアオイちゃんでしょ?』

『えっと、すみませんーー』

『いやいや!会ったことは無いんだよ?
ただサツキくんの妹だから知ってるだけ!』

なんだか、嫌な感覚が蘇る。

学校にいる時みたいな。

そう言えば私はずっと《 サツキ先輩の妹》だった。

『カナだよ!よろしくね?』

『よ、よろしくお願いしますーー』

吃ってしまって恥ずかしい。

「お前ほんと、久しぶりじゃん。」

『ですよね!
お店移動してここの近くになったんです!
ずっと来たいなって思ってたんですけどなかなか来れなくてーー』

キラキラしてる。って思った。

綺麗にセットされた髪。
なんでこんなに細いのに胸が大きいんだろう。
ゆったりしたニットから覗く白い肩が色っぽくて。

散々お兄ちゃんに貶された後にこんな子を見ちゃうとここから逃げたくなる。

長いまつ毛に艶々の唇。
ゴージャスなピアスが更にセクシー。

見てらんなくて俯いたらお洒落なピンヒールが目に入った。

慌てて目を逸らしたら惨めな私のスニーカー。



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