shape of light
[上](1/6)




「やば」


大きく反って


………かったなぁーーーー」


反動で身体を折り曲げた。
汗で濡れたシャツが気持ち悪い。


「強かったな」

ワタルはバケツで水をかぶったのかというくらい濡れている。
最前でモッシュに参加していた。


ウインドブレイクはすごかった。
それなりに人が前に集まって、手の上がり具合やかけ声も良くて盛り上がった。
曲もまとまっていた。



「秋赤音」


トリで出てきたバンド。


「あれは強すぎたな」
「最初めっちゃ怖かったなあ」

全員真っ赤なポンチョのような服を着て俯いていた。
顔が見えなくて、無言で、証明も暗くて、
死神集団のような印象だった。

演奏が始まった瞬間、ビリビリと皮膚が痺れ、内蔵がズンと揺れた。


気付いたらモッシュの中で暴れていた。


「ウインドブレイク目的のつもりがえらいもん見ちゃったな」
「あれインディーズ?」
「だろ」

「あそこまでできるようになるかな」

「いやアレはもうレベ」


言いかけたのを止めてソウゴを見た。


「あのレベルになりたいのか」
「ウン」

迷いのない返事。

恐らく感覚が近いはずのワタルを見た。
多分同じようなことを思っている顔をしている。

「それより上にもいきたい」

……とにかくたくさんライブをしたいから
2つサークルに入っただろ」
「たくさんライブはしたいけど、クソサーでカバー曲を繰り返すより、今日みたいな場所で、本気で音楽が好きな人達の中でやりたい」
「わかる」

ミツキはどうやらソウゴと同意見らしい。

「やるからには、上を目指したいね」
「アレは、現実的じゃない気がする」
「現実的にする」
「もっとアツいことできるはずだよ」
「あそこに立ちたい」

「行けると思う?」

ワタルに聞かれた。

少し考えてみる。


「まずはこのバンドで
ライブをしてみたい」

「確かに、まだ予選すら通ってない」
「通るに決まってるだろ」
「そうか?」
「でも確かに、1回ライブやってみないと、何とも言えないな」

ミツキが心底楽しそうに笑う。


「このバンドがどこまでいけるか」



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