狂愛メリーゴーランド
04.[カ ウ ン ト ダ ウ ン](1/11)




あれは、何時だっただろう。




『どうして、私なの?』




彼が私をからかって遊んでいるとしか思えなくて、そう尋ねたことがある。




『うーん……どうして、って聞かれてもなぁ』




私の問いに、少し困惑した表情でこう言った彼は。




『美月だから、だよ。
……これが運命ってやつなんだろうな』




そう言って、照れたように笑っていた。







救急病院に行き、夜間診察、縫合、お会計。

全治1ヶ月の怪我だった。


やっぱり、そんなにひどく無かった。
取り敢えず一安心。



お医者さんには何故こんな怪我をしたのか色々と説明しなければいけなかったけど、私の不注意、という形で押し込んで、無理矢理丸く収めてもらった。

そこに日下部家の権力が関係していない、といえば嘘になるけど。



……薄っすらと首に付いた、絞められた指の跡は。誰にもバレないように、ストールを巻いて隠した。





そしてお兄さんと深夜頃に帰宅、けど、弥生くんは自室に籠もっているみたいで会えなかった。



……もう、彼の涙は止まっているだろうか。


気にしないでね、って。
大丈夫だよ、って。

そう言ってあげたかった。



お兄さんを刺そうとした事は紛れも無い事実、けど、私を刺すつもりは無かった。
事故、だったんだから。



弥生くんを励ました後、
もうしないでね?って。
どこかを一発軽く殴りながら、少しふざけて言ってやるつもりだったのに……。



弥生くん、いっぱい泣いてたけど大丈夫かな。

……結局、涙の意味は 聞けなかったけど。




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