ヤンデレとサイコパス
11[黒い真実](1/20)
意識を失っていた間、和也は色のない夢を見ていた。
そこに、一人の少女がいた。
夏目莉緒。
彼女こそ、和也が思いを寄せる人物だった。
無色の彼女は美しく、そして悲しげに佇んでいた。
──夏目さん……。どうして泣いてるの?
そう呼びかけるが、返事はない。
声が届かないようだ。
手を伸ばしても触れることができない。
彼女には、和也の姿が見えていないのだった。
和也は、泣いている彼女の視線の先に、ベッドに横たわる自分の姿を見た。
……僕は死んだ、のか?
愕然としながらも、彼は何とか冷静さを取り戻し、じっと考え込んだ。
このまま死んだら、アイツは殺人犯になってしまう。
もちろん罪は償って欲しいが、僕の死で、アイツの一生が台無しになるのは忍びない。
それに、夏目さんも一生悔やみながら生きることになる……。
そんなのは絶対ダメだ!
和也は生きたいと力強く願い、目覚めることだけに精神を集中させた。
そして五日ぶりに目を覚ますと、夢に見た莉緒の姿がそこにあった。
美しく可憐で、儚げな彼女の姿が……。
さすがに体力は消耗していたが、医者はもう大丈夫だと太鼓判を押してくれた。
後は少しずつ、リハビリをして快復していくのみだ。
その後も莉緒はたびたびお見舞いに訪れ、和也に生きる希望と活力を与えてくれた。
しかし、ある日を境に、彼女は病室に現れなくなったのである。
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