明るい家族
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広い体育館で入学式を終えた私たち新一年生は
そこで親と別れて、
さっそく学びの教室へと移動した。

私立の高校は中学のときより校内が綺麗で
教室も広々としていた。


教室の机には名前が書かれた紙が
セロハンテープで貼りつけられていた。

自分の名前を見つけ、
ようやく座れると思って周囲を見渡すと、
女子たちはさっそく友だち作りに没頭していた。

自分の席を見つけることばかりに
気を取られていて、すっかり忘れていた。
まずい。
女子の団結に乗り遅れたら浮いてしまう。

事態に後悔しながらも、
ちょこんと自席に着席したまま動けない。

最終手段で、
隣に座った女の子と話してみよう
と意気込んだものの、両隣の女の子は
中学の頃からの仲のようだった。

「クラスたくさんあるから麻奈と同じクラスになれるとは思ってなかったよ!」

「まなもー。亜紀いて安心。ごはん一緒に食べようね」

「もちろん!」

私を挟んで話が盛り上がっていて
話しかけづらい。

気を落としていると、右隣の女の子、
亜紀ちゃんが私に話しかけてくれて、
そしたら左隣の麻奈ちゃんも声をかけてくれて
どうにか話せる友だちができた。


安心して間もなく担任の先生が入ってきて、
ホームルームが始まった。

入学祝いの言葉、これからのこと、
一通り話が終わると、先生が

「藤宮」

と、突然私の名前を呼んだ。

驚きながら返事をして立ち上がる。

「いや、おまえじゃなくて。あ、そうか、藤宮は二人か」

そう言われて、ぽかんとする。

すると私の横を黒髪の少女がすーっと通った。
目で後姿を追う。
どうやら藤宮という同じ苗字の子が
もう一人クラスにいたようだった。


セミロングのその子は
教卓のところで先生と少し会話をした後に
席に戻った。

何だか不思議な雰囲気の子で、
また横を通られたときも目で追ってしまった。

席は私の真後ろだった。






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