僕が監禁された理由
[残酷な現実](1/2)
精神を集中させると、あのときの僕の視線が映像になって、頭の中にぼんやりと浮かびあがる。


緑色の廊下の上で交互に動く僕の足先。そこにはなぜか無数の水滴が落ちている。


しかも、臭い。なんだこれは。



ていうか、ちょっと待てよ…


ああ、そうだ…


なんで、こんな単純なことに気がつかなかったんだろ。


反対側はゆいちゃんのクラスだ…



でも、なんで?


僕とゆいちゃんは校内ではなるべく接触しないようにしていたはずだ。


なぜなら、ゆいちゃんは僕だけじゃなくて、学内でもアイドル的な存在だった。学年を問わず憧れている男子はたくさんいた。


だからとうぜん僕と付き合っていることを妬むやつもいた。それも無理もない。


普通に考えて僕のような何も取り柄のないチビデブのバカが、校内ナンバーワンの美少女と付き合っているなんて許せるはずがない。校内でベタベタしてたら他の男子に恨まれるだけだ。


僕が逆の立場でもそうだ。


ゆいちゃん…


夢でもいいからもう一度会いたい。会って思いっきり抱きしめたい。


止まっていた僕の足先が、ゆっくりと再び動き始めた。


ゆいちゃん、いまそっちに行ってるから、もう少しだけ待っててよ。


もう少しでゆいちゃんのあの笑顔に会える。


そんな気がした。



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