H-エイチ- poison(1/8)







かつて、トモが俺にこういった。
学校の体育館の隅っこの陽が当たらない日陰で、男の俺から見ても綺麗な眉と顔にどこか不敵な笑みを浮かべて。





「それで? 嘘だらけのお前を誰が愛すというの?」





その短いとも長いとも言える言葉は、俺の心の奥底に深く、深く突き刺さった。
図星だったんだ。
顔が良くて、頭もそこそこよくて、けれでおちゃらけていて馬鹿。
そんな俺は女の子に困らなかったし、向こうから俺に声をかけてくれていた。
けれどそれは? 蓋を開けてみればなんてことはない。




歪みまくった家庭環境のせいで、周りから好かれるようにと作り上げた住吉夏逢だった。




俺の家は、父が再婚していて俺は父の連れ子。
俺は母が大好きだったんだけれど、俺が12歳、中学一年生の春に死んでしまった。
俺のこのナイアっていう当て字もいいとこの名前は母がつけた。
夏生まれの俺に、逢えたからということで、夏に逢うで夏逢。
こんな名前を付けちゃうあたり、やっぱり馬鹿な人だったんだと思う。



けれど、母は優しい人だった。
そして、脆い人だった。



父は糞みたいな男だった。
そして、その浮気相手は屑だった。




浮気相手はなんとしてでも父と結婚したかったらしく、その為には母が邪魔だった。
だから、執拗に無言電話をかけたり、父とのいかがわしい写真を送りつけたりと、なんともまあ下品なことをしたらしい。
そうして脆い母は、壊れてしまった。







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