パレード
[騒々しい朝](1/8)
AM6:00
覚醒の歌のラッパの音が、高らかに響き渡る。
「……」
パチリと目だけを開け、まどろみの淵を漂う。
夜中起きていたせいか、いつものさっぱりとした感覚になれない。
腕の中にいる、メロディの顔を覗き込む。
気持ち良さそうにすうすうと寝息をたて、きゅっと握った手のひらで俺の胸元を掴んでいた。
(……無防備すぎる)
襲ってやろうか?と邪な気持ちがもたげるが、その頭に頬を摺り寄せ、いい香りに包まれることで、我慢することにした。
(だるい。このまま二度寝すっか)
再度目を閉じ、眠りの世界へーー
「おい、メロディいつまで寝てんだ」
ガチャリと扉のひらく音。
「へ!?」
聞き覚えのある声に、ばね仕掛けのように起き上がってしまう。
扉を開けたままの姿勢で硬直している、メロディの兄貴。
「ユタカ兄ちゃん!? 」
「おおー、ミュージ! 遊びにきてたのかぁ!」
久しぶりに会うその人は、妹によく似た笑顔を見せる。
小さい頃はメロディともども年の離れたユタカ兄ちゃんによく遊び相手をしてもらっていたものだ。
兄ちゃんが結婚して家をでてからは、めっきり会うこともなくなったのだが。
「あれ? でもなんで兄ちゃんが俺の部屋に……」
思わずきょとんとしていると、ダハーっと手を額に当てる。
「そうとう寝ぼけてんなミュージ。
ここはマンションの最上階、メロディの部屋だよ!」
「は!?」
慌てて周囲を見渡す。
部屋の内装は女の子らしいパステルカラーで統一されており、確かに俺のものとはかけ離れている。
そして視界に入る、無残に割れた窓ガラス。
中途半端に開いたシャッター。
花柄のカーテンがふわふわと風に揺れる。
「え、ちょっとどういう……」
立ち上がろうとすると、寝ぼけたメロディに裾を引っ張られた。
ベッドに目をやると、壁際ではリンリンも眠っており、シングルサイズのベッドはキツキツだ。
この状況。
何がなにやらさっぱりわからない。
そもそもなにを当たり前の顔してメロディを抱いてたんだ。
今更ながら恥ずかしさがこみ上げる。
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