花筏 〜はないかだ〜
[18章 ずっと、ずっと](1/8)
いい匂いが漂う食事処の厨房で、私は今日も重箱と格闘している。
これはこっち?
いや、こっちかな。
彩りよく…バランス良く…。
うん…。
「できた。」
「どれどれ?あら…とっても綺麗に盛り付け出来たわね。」
仕込みをしていた女将さんが、私の肩ごしに重箱をのぞき込んで、よく出来ましたと笑ってくれる。
「本当だー。これならきっと、沖田さんも褒めてくれるね。お姉ちゃんまるー。」
私の隣で煮物のつまみ食いをしていたフミちゃんは、両手で大きな丸を作っている。
「何言ってるの、フミ。沖田さんは舞ちゃんが作ったものなら、どんなものだって褒めてくれるわよ。」
「そうだね。沖田さん…お姉ちゃんのこと大好きだもんね。」
「そ…そうかなぁ…。」
だ…大好きなんて…言われたことないけど…。
いつか…。
いつかでいいから…。
私のこと…そんな風に思ってくれたらいいな…なんて。
そんなこと考えてるだけで、顔が赤くなっていくのが分かる。
ふぅー…なんか暑くなってきたなぁ。
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