花筏 〜はないかだ〜
[16章 細い指](1/6)


「はぁ。」


今日、何度目かのため息が忙しく行き交う人たちに紛れて消えていった。


ため息と一緒に幸せが逃げていく


そんな言葉が頭に浮かんで、私は慌てて息を吸い込む。


幸せが逃げていかないように


「お使いの帰り道に、買い物でもしてきたらいい。」


そう言って玄二さんはお小遣いを持たせてくれたけれど


そんな気にもなれなくて


私は木陰にしゃがみ込んで、行き交う人々をただただ眺めていた。


もしかしたら、沖田さんが通りかかるかもしれない


そんな、甘い期待を胸に






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