花筏 〜はないかだ〜
[4章 あなたに逢うために](1/4)



風が止んだのを感じて、そっと目を開ける。


なんだ


私は死ねなかったらしい。


あのおじいさんは死神じゃなくて


ただのマジシャンか何かだったのかもしれない。


目の前をはらはらと桜の花びらが舞っているその奥に、神社のしめ縄が見える。


何も変わってないよね。


不意にどこからか視線を感じて、振り返ったけれど


そこに、あのおじいさんはいなかった。


ほっとした様な


少し残念な様な


私は何だか気が抜けてすとんとその場に座り込んだ。


何にも変わらない。


何にも変わらないの?


私はひとりぼっちのままなの?


胸の奥がぎゅっと締めつけられてどうでもいいわけじゃなかったことに気づく。


私は知らず知らずに何かを期待していたんだ


さわさわと枝を揺らす木々の音が、私の寂しさを掻き立てる。


そんなつもりなかったのに


気づいたら泣いていた。






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