音のない世界で
[第6章](1/10)
山南さんが切腹して数日後、西本願寺に屯所を移転させることが決まった
『‥ここは以前の屯所に比べてかなり広いですね』
「隊士の人数が増えたから、かなり手狭だったしな。ここなら丁度いいくらいだろう」
『‥そうですね』
「ここでは俺と相部屋ではなく、お前1人の部屋が与えられる」
『え?そんな‥私は女中です。女中1人に部屋を与えるなどそこまでしていただくわけにはいきません』
「‥近藤さんが、年頃のお前にも自分の部屋があってもいいだろうって。だが、何かあったら困るから近くには幹部達の部屋がある。何かあればすぐに来たらいい」
『‥どうして、そこまでしてくれるのですか』
「どうしてか‥」
土方さんは私の髪の毛をクシャリと撫でた
「お前は新撰組の大切な仲間だからだ」
仲間‥
この世の人間でもない私を仲間だと言って大切にしてくれる事が嬉しくて、何よりも幸せだった
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥
入浴して縁側で腰を下ろしていると、後ろから肩を叩かれた
『沖田さん』
「こんな所にいたら、湯冷めしちゃうよ」
『また髪の毛乾かしてないんですか。沖田さんこそ湯冷めしてしまいます』
「音羽ちゃん、また乾かしてくれる?」
『わかりました』
髪を拭くと気持ち良さそうに目を閉じている
「ほんと音羽ちゃんに乾かしてもらうと気持ちがいいんだ」
『‥沖田さんって子供みたいですね』
「えー。君よりは歳上なんだけどな」
そう言うと少し怒ったように口を尖らしている
その仕草すらもなんだか可愛らしかった
『はい、終わりましたよ』
「ありがとう、音羽ちゃん」
私の頭を撫でると優しく微笑んだ
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