inメルヘン
ハーメルンの笛吹き男(1/12)
私がたどり着いたのは、不思議な街。
小さな子どもが出迎えてくれたかと思えば…
店番をするのも、ご飯を作るのも…
野菜を収穫しているのも、みんな子ども。
そこは、『子供しかいない街』だった。
そんな中、たったひとり、大人がいた。
みんなからは『笛吹きのお兄さん』なんて呼ばれていて…
話を聞けば、この街の唯一の大人らしい。
「突然の訪問を受け入れてくれて、ありがとう。とても助かりました。」
「ようこそ、子ども達の世界へ。ここは子ども達が主役で、子ども達が主体となって物事を考え、尊重し合う街だよ。ゆっくり、していってね?」
「おもしろい街ね。子ども達だけで、生活ができるもんなの?」
「俺が子供たちに、生き方のノウハウを教えたんだ。洗濯や家事からはじまり、自炊や野菜の栽培も教えてる。みんな、やれば出来る子達ばかりなんだ。」
「なるほど…どおりで。大人は、どこかへ行ってしまったの?まるで…突然消えてしまったみたいだけど…。」
私の質問に、笛吹きは一瞬表情を曇らせた。
まずい事を聞いてしまったのだろうか。
笛吹きはひとつ息をつく。
「昔…といっても、つい最近の話。子ども達は、俺がここへ連れてきたんだ。」
そして、笛吹きが話し始めたのは、あの有名な童話の内容そのものだった。
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