#7『七夕の夜に』 (1/8)
結局、26歳の誕生日は、何事もなく過ぎていった。
7月7日七夕。天気はまたグズついていた。
テレビのニュースでは「梅雨明けの発表が早すぎた」と、コメンテーターがお得意の結果論で非難していた。
女性レポーターは「織姫と彦星が可哀想」と、表情を変えずに言った。
私は傘を持って家を出た。
しばらくは何も考えたくなかった。
ただ仕事をこなして、1日を終わらせたかった。
繕ってきた自分が、崩れ落ちそうなギリギリのラインを綱渡りしていた。
黙々と作業していたから、予定の仕事がいつもより早く終わった。
本当はもう少し会社に居たかったけど、上司に帰宅を促された。
会社の方針で、残業時間は出来るだけ減らさなければならなかった。
会社を出たら、まだ小雨がパラついていた。
「はぁ…」
更衣室に傘を忘れたことに気付いたけど、取りに戻るのが面倒だったので、そのまま帰った。
電車に揺られながら、窓の外を眺めた。
どうやら雨は上がったみたいだけど、厚い雲は秘め事でも守るように、空に垂れ込めていた。
日が落ちて、空の青の濃淡が、絵の具の水のような斑模様を創っていた。
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