忘れ者
・∇其の戎(1/11)


「あの!」


無人のホームから出ようとする恵助を呼び止めた。


「んー?なんだ?」


「あの…えっと…わ、わたし…の話、聞いてくれない…?」


目が合わせられない。


恵助みたいに清んだ目に見つめられると
自分の汚れを浮き彫りにするようで。


足下だけをみていた。


地面が徐々に滲んでく。


恵助はホームのベンチに座り「お前も」と言って隣を叩く。


私はコクンと頷き、腰を下ろした。


そして、
つまりながらだけど、
目は震える手元ばかりみてたけど、
ズボンの太もも部分の色が変わってしまったけど、

全部を話終えることができた。


恵助はただ「うん、うん」と相づちを、うっていた。



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