サンクション
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[ケース6 穂村と雅樹](1/20)
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現在の雅樹はというと。
あれ以来出番がなかったものの、実はものすごく気が滅入っていた。
やる気を削がれたというか、完膚なきまでに打ちのめされたというか。
20年後の自身が身近にいるとも知らずにただただ落ち込んでいた。
気を紛らわそうといろんなことにがむしゃらに打ち込もうとすると、必ず脳内でアノミーの人格が言うのだ。
『根本的な解決策ってそんなことじゃないでしょう?』
だったらどうすりゃいいのだろう。
あのクソガキにリベンジでもしろというのか?
『今のキミじゃ勝てないよ。もっと向き合わないといけない相手がいるよ』
…お前か、自分自身か。
こんなにアノミーという症状が厄介とは思わなかった。
知られた以上、現役たちが俺を潰しに来ると恐れていたが今年の方針が決まってやはり三橋の意見に沿ったものとなった。
…だが俺らがやってきた方針はあまりにも浅はかすぎたのを悟った。
…無条件にアノミーだからととっちめてきたが、そのやり方は間違っていた。
今は自力で抑制できるものの、アノミーを抑えるというものは容易ではなかった。
引退して後悔ばかりが出て来る。
…ある種あの女の方が正しかった…
思い返しては気が沈み、イライラしてしまう。
雅樹は大学内の人から
「何やら機嫌が悪くて近寄れない」
「最近態度が悪い」
と言われて腫れ物に触れられるような扱いを受けていた。
ため息しかでない。
やはりあの女が歴代最強だった。
しかもその強さとかそんなものはサンクション自体に関係なかった。
1年間やってきたことが根本的に間違っていた。
雅樹はしばらく何も手につかなくなってしまった。
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