サンクション
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[ケース2 泣きっ面に蜂](1/16)
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22時頃に利樹が帰ってきた。

利樹の分のご飯を温め直して、テーブルの向かい側にパソコンを開いて課題をやる。

左手で頬杖ついて右手でキーを打っているところを見るとそんなにやる気がないんだろう。

利樹「今日はオムライスか」

着替えてテーブルに着くと食べ始めた。

利樹「課題?」

瑠璃子「うん」


オムライスを食べながら資料と画面を見ている瑠璃子の向かい側から見るが、どこかやる気が見えない。

利樹はとりあえずオムライスを食べることにした。

今日は味が雑だな。しかもなんか元気がない。

まさか血だらけのブレスレットを知ってまだ困惑しているなんて知らず、それなりに何があったかを想像していた。

利樹「サンクション慣れたか?」

瑠璃子「まだ何とも始まって一件しか受けてない」

利樹「これからだな、まだ4月だし」

利樹の話の途中で外で悲鳴が聞こえた。

その後すぐに何やら女性らしきうめき声がした。

利樹が咄嗟にベランダに出て様子を見る。

マンションの庭で暗がりの中、1人何やら身体中を掻きむしっていた。

瑠璃子「なんだあれ」

マンションの各部屋から人がベランダに出てざわつき始めた。

利樹がベランダを出て部屋を飛び出した。

瑠璃子も後を追うと、既に庭周辺では木や芝生が血で染まっていた。

その人は30代くらいの女性でひたすら身体を掻きむしっていたが、服の上から掻きむしっていて既に着ているものはボロボロになっていた。

同じマンションに住む宮島さんと気づいたが、形相まで変わり果てて一瞬誰だかわからなかった。


瑠璃子「アノミー?」

確かに目がウサギのように赤いのだが、一向にこちらに危害を感じられず、ひたすら血だらけになってまで身体を掻きむしっていた。

だが遅れて気づいた。

どれほど強い力で掻きむしったのか皮膚どころか身体中肉がボロボロになり、所々内臓や骨まで見えていた。

あまりに悲惨な光景に瑠璃子は絶句した。

これは何型だ?

何故こんな状態になった。

動揺する中、横では利樹は何やらどこかに応援を呼んでいた。

止めなきゃと瑠璃子が近づこうとしたが、利樹に止められた。

瑠璃子「なんで止めるの!」

振り払おうとしたが、後ろから強い力で利樹に抱き竦められて止められた。

同時にその人は自らの首の動脈を凄まじい力で引っ掻いた。

血が噴き出し、膝をついてそのまま倒れた。

何が何だかわからず、何故利樹が止めたのかもわからず、瑠璃子は呆然とした。

数分後に救急隊が到着したが宮島さんを担架で運ぶ際、青いビニールシートで覆われていたのを見て命が尽きたのを察した。

利樹が救急隊の人と状況を話していたが、何度も見慣れているはずの人たちが「初めてみた」「もしかしたら最新型かもしれない」という事を言っている。

我に返り状況をやっと把握した瑠璃子は突然気持ち悪さが押し寄せてきてその場で吐いた。






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