珈琲とラスクとそれから
[レンズの先に視える世界](1/4)
晴れた空、道行く人々。冷たい風が、僕の心臓の内を貫いてゆく。
背の高い街灯から放たれる気のない光が、無機質に走る自動車を照らしている。歩道を賑わせるのは、人々の楽しそうな声と、立ち並ぶ店のうるさい蛍光灯。
僕はそんな景色を、歩道橋から一人で眺めていた。殆ど人が通らない古びた歩道橋は、この街には合っていなかった。
まるで僕みたいだ、と錆びきった手すりを撫でる。それから嗅いだ手のひらは、思わず眉をしかめてしまうほどに臭かった。
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