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みんなも作ってアラモード 1/1 


  妹の親友であるツグミちゃんはたまに家へ遊びに来てくれるので、僕も同じように仲良くさせてもらっています。

たいていは妹とツグミちゃんの二人でもって部屋でくつろいだり、リビングにテレビを見に来たりするのだけれども。

「お兄ちゃーん」

この日はごっこ遊びをするというので、珍しく僕にお声がかかったのです。

「私はお姫様。ツグミちゃんは隣の国のお姫様。お兄ちゃんは隣の国の王子様ね」

王子様役だなんて照れるなあ。ではお姫様、僕は何をしたらよいのでありますか。

「んーとね、お兄ちゃんは死ぬの」

え、死ぬ?

「隣の国の王子様は病気なんだよ。治療のために私の国へくるんだけど、助からなくて死んじゃうの」

そんな。もっと明るくて朗らかなごっこ遊びをしようよ。病気で死ぬなんて悲しい設定じゃあなく。

と訴えてみるものの当然のように僕の主張は却下され、しょうがなくソファに横になったのです。

横になって呻く僕に、覆いかぶさってシクシク泣く芝居をするツグミちゃん。

「王子様、死なないでよお」

なかなか力の入った芝居。妹は神妙な面持ちで僕を見ています。

呻く僕、泣くツグミちゃん。
かれこれ十数分もこんな感じで芝居は続き、いよいよ死ぬと言うので僕は大きく呻いた後パタリと脱力してまぶたを閉じました。

「王子様あー、いやああ!」

僕の胸にかぶさり、一際大きな声で号泣する(芝居の)ツグミちゃん。ツグミちゃんの顔が近い。あわやマウストゥーマウス、と言わんばかりの近さ。


「治療の甲斐なく、王子様は息を引き取ったのです。おしまい」

妹の締めでごっこ遊びは終わったものの、

「ほんとに悲しくなっちゃったあ」

なんて健気に笑うツグミちゃんを見るとなぜだかドキドキしてしまって困ったなあ、これは。

妹を見ると悪戯っ子のような顔で

「好きになったら犯罪だからね」

とか言うものだから、こいつめ、と思うのですが冷静になってみれば僕が妹と同じ小学生女児など好きになるわけがないのです。


ただ、このせいで、今まで何とも思わず見ていた教育テレビの某料理番組のクッキンアイドルをまともに見られなくなってしまったことに関しては、この妹を恨まずにはいられない。

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 ちょっと休憩を




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