wonder wonder

彼女のこと 1/1 


  舞い落ちる雪を見ていると、僕が転校した時のことを思い出しますよ。あの時期もこんな雪のふる天気でした。とても寒くて、手がかじかんで。

転校先は都会の高等学校。たまたま女子の多いクラスで困ったものです。嬉しさ半分戸惑い半分。まあドキドキしていたことに間違いはありません。

その中のある女子に気に入られたらしく、来る日も来る日も声をかけられ話をしました。ほとんどは他愛のないこと。兄弟はいるかとか、食べ物は何が好きか、とか。

転校したばかりで知り合いのいないうちはその気遣いもありがたく感じたのですが、それから半年経っても、一年経ってクラスが変わってしまっても彼女は毎日話をしにやってくるのです。

ひとりでくるときもあれば友達を連れてきたこともある。このとき僕は非常に鈍くて、よく話してくれる子だとしか思わなかったのだけれど。

さすがに今となってはわかります。
彼女、多分僕のことをそういう風に思ってくれてたんだと。

ただ、その頃まだ青かった僕は彼女に言ってしまった。女子ばかりといると冷やかされてたまらないから来てくれるな、と言ってしまったのです。

すると、会いにこない代わりにそれから毎日手紙をくれるようになりました。手紙は決まって朝の下駄箱の中。手紙なら、と僕もそれを受け取っていたのだけれども。


ああ今、カタンと音がしたでしょう。
手紙ですよ。外に出てごらんなさい。

未だにこうして毎日一通、彼女の手紙が届くんですよ。


死んで三年経つというのに、よっぽど僕のことが忘れられなかったんだろうなあ。

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