04@[27歳の誕生日](20/20)
でも彼からは絶対に仕掛けてこない。これまでもずっとそう。あたしの出方を観察している。
そんなふうにされると、あたしだって、馬鹿な真似はできないって、思うんだよ。
「……終電、ありますか……?」
「今日は大丈夫。もう帰るわ」
「……ん。気をつけて帰ってくださいね。本当にありがとうございます」
「いいんだよ。当て馬キャラはこんぐらいがちょうどいいだろ。じゃあまたな。おやすみ」
どこにも触れずに駅のほうへと歩いていく矢部さん。どんだけかっこいいんだよ、あのひと。
部屋に入り、明るいところで改めて花束を確認する。ピンク色を基調とした可愛らしい花束。
見れば見るほど、胸の奥がぎゅっと痛んだ。
こんなにも素敵なプレゼントをしてくれているのになぜ、気持ちが揺るがないのだろうか。
晃ちゃんのくれた思い出のチョコレートなんてたかだか何百円なのに。どうして越せないんだろう。
好きになりたいと思った人をそのまんま好きになれたらどれほど楽か。
こんな自分が嫌で嫌で仕方ない。
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