神獣の花嫁〜かの者に捧ぐ〜【改訂版】
*[呼びかける真名(なまえ)・其之参](1/37)
「逢いたいの…ハクに。そのためには、生きて…この世界に留まらなきゃ」





      《七》



月明かりのもとに現れた、神の獣。

白い毛並みに薄い黒の縞模様の、気高き虎───にもかかわらず、
その高潔さを汚すかのように首にある枷の、なんと忌まわしいものか。


咲耶は、怒りと悔しさと悲しみがない交ぜになったまま、舞殿の階段を一気に駆け上がった。


『神』と謳(うた)いながら枷を付けることへの憤りを抱え、何も知らずに『宴』に参加しようとした自分の浅慮を悔やみながら。

『現(うつ)つ』の《見世物》とされてしまった、ハクコに近寄って行く。


「───ハク……! ちょっと待っててね。

いま私が、こんなの外してあげるから……」


たどり着いた先にいる優美な獣は四肢を折り曲げ、じっとしている。

“契りの儀”の時よりは成長し、体つきも成獣に近づいてはいるが、やはり成長途中の感は否めない。


青い瞳をのぞきこむが、そこからはなんの意思をも見当たらなかった。


「ねぇ、ハク……どうしちゃったの? 私が、分からない?」




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