神獣の花嫁〜かの者に捧ぐ〜【改訂版】
*[呼びかける真名(なまえ)・其之弐](1/35)
「お前さえ側にいてくれるのなら、私は名などなくとも良いのだ」
《四》
いつもなら、とっくに休んでいる時間ではあったが、今日は朝から晩までいろいろとあって───ありすぎて。
咲耶は、なかなか寝つけずにいた。
(先に寝ててもいいんだろうけど……)
ハクコに、まだきちんと礼を述べていない。
百合子の指摘を受けて犬貴が提言したのか、闘十郎から直接、苦言を呈されたのか、それは解らない。
どちらにせよ、ハクコが咲耶のためを思って、新たに“眷属”を増やしたことには違いなかった。
これで少なくとも百合子の懸念のひとつは、なくなったことになる。
……犬貴が“眷属”として、ハクコと咲耶、どちらを優先するべきかなどと、悩まなくて済むからだ。
(まぁ、そんな事態にならないことが、一番だけどね)
備えあれば憂いなし、ともいう。
咲耶の力量が伴わない今だからこそ、尽くせる手は尽くしておくべきだろう。
「失礼する」
布団の上でひざを抱えていた咲耶は、その声の持ち主を、勢いよく振り返った。
「すごいね、ハク。
今日だけで、“眷属”が三人も増えるだなんて───」
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