僕らはまだ、恋を知らない。
お友達に、痛む心。 (1/26)
“着いたよ〜”
二日目の午前中、一樹くんがやってきたと連絡を受けたことを沙彩に伝えると、彼女はとても嬉しそうに笑った。
「こっち来るって?」
「うん。“真っ先に穂香とサーヤに会いに行くから!”って」
「うわ、そこにあたしの名前が入ってるのかなり嬉しいんだけど」
今日も既にメイド服に身を包んで店番をしている。
明らかに昨日よりも気合いが入っている沙彩を微笑ましく思いながら、一樹くんの来店を待った。
……が、いつまで経っても姿を現さなくて。
「遅いね…ちょっと探してくる」
「うん…まさか迷子とか」
「まさかぁ」
「あ。あたし代わりにお店いようか?」
「ありがとう!お願いします!」
その時ちょうど教室に戻ってきたりーちゃんに少しの間店番を代わってもらい、一樹くんを探しに出た。
一樹くんに限って迷子ってことはないと思うけど…もう二十歳だし……とすると、軟派な彼だからもしかしたら……
「なーんだ、彼氏いるんじゃん。そうならそうと言ってよ山田ちゃーん」
その嫌な予感は奇しくも的中してしまった。
「あっ」
角を曲がったところで見えたのは一樹くんと、彼を睨む水瀬くん…その隣に槇田先輩。
一樹くんのことだ。どうせ綺麗な槇田先輩を見て声を掛けていたところに、水瀬くんがやってきたのだろう。
何やってんだか……ていうか“山田ちゃん”てそれもしかして偽名使われてない?先輩も面倒だったんだろうなあ…
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