そしてまた春になる
[弓張り月](1/13)
*
「こんばんは、螢さん」
時刻は九時二十分。
いつものようにさくらの元を
訪れた僕に、
いつものようにさくらが
そう挨拶して、
「ねぇ、こっち来て?」
僕にいつもの挨拶をさせる暇もなく、
僕をベランダへと誘いかけた。
「今日は月が綺麗なのよ」
.....今日は満月だっただろうか。
そう思いながら、
差し出されたさくらの手を取り、
一度は通ったベランダへと出る。
『半月.....』
「ね、綺麗でしょう」
見上げるとそこには美しく、
それでも雲に霞み今にも消えそうな
半月が浮かんでいた。
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