俺のこと好きになれよ。

☆エースとマネージャー(10/10)








「ただいま。」





家に着くともうテーブルにはご飯が並んでいる。
先にご飯を済ませた家族はリビングでくつろいでいる。





「今日なんか遅かったね。今ご飯とお味噌汁持ってくるね。」





そう言ってまた台所に立つ母。
いつもならそのまま椅子に座るけど…






「父さん。チェンジアップ教えて。」






ソファで野球中継を見ている父に声をかけた。
くるっと振り返りじっと俺を見つめる父。






「どうした急に。」





「教えてほしいんだ。俺何が何でも甲子園行きたいから。」






父の表情は一向に晴れない。



俺が今投げれる球種はストレート、カーブ、スライダー、シュート。
俺が習得したいチェンジアップは速球と同じ腕の振りで投げる遅い球。
緩急をつけるために必要な球種だと思う。






「そんなすぐに身につけられるもんじゃない。野球を舐めるな。」





珍しく父は拒否した。
多分きっと俺が焦っているのを感じ取ったんだと思う。
だけど……






「だから努力すんだよ。負けたくないから絶対に。舐めてないよ、難しさをわかってるから上目指して頑張りたいんだよ。」






黙って腕を組みながらテレビ画面の野球中継を見ている父に必死で訴える。
昨年の夏も秋も後悔しかない。
もっと自分が踏ん張れば上に行けたのに。



本当はずっとずっと後悔してる。
今でもたまに夢に出てくるほどに。







「俺だけの夢じゃないし…連れていきたい奴がいるから。」





夢の舞台に仲間と共に立ちたい。
一生懸命支えてくれる村田を聖地に連れていきたい。



誰かのために必死になれる自分も悪くないなって思ったんだ。







「…エースの自覚が出てきたんだな。」




そう言って小さく笑う父。




「さっさとご飯済ませろ。」





立ちあがり利き手じゃない方の俺の肩をポンッと叩く父。





今まで俺は父と比べられるのを嫌がった。
だから父さんにも逆に野球のことを聞くことはなかった。
自分の力でここまで這い上がってきた、それを強調したくて。





だけど今はそんなプライドなんてない。
偉大なる野球選手の父を持ったんだ。
それを有効活用させてもらおう。




今は自分のちっぽけなプライドよりも、
甲子園の方が大事だから。




だからエースの座は誰にも譲りたくないんだ。





自分の中で少しずつ何かが変わり始めていた。










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