見えないモノに恋する私。
[2.](1/3)
「いってきます」
お父さんはとっくに会社へ行った。
私が声をかけたのはお母さん
いつからだろう…お母さんが部屋から出てこなくなったのは
私が中学に上がってからだった気もするしもっと前からだったのかもしれない。
「今日はバイトがあるから22時に帰るね」
お母さんの部屋の前でそう声をかけてから家を出るのがいつの間にか当たり前になっていた。
靴を履き、ドアを開ける。
玄関の外にはいつも白髪の鬼がいる。
この鬼はいつでもここにいた。
にっこりと笑って私に手を振り
「おはよう」と言って見送ってくれる
勿論、鬼に声をかけずに無視をする。
そして友達の家に寄るんだけど……
「既読、ついてないな」
こういう時は大抵寝てるんだよなぁ。
電話しても出ないし、仕方ないからインターフォンを鳴らす。
この時出てくるのが人間とは限らないからできるだけ避けたいけど遅刻するわけにはいかない
ーピーンポーン
「はーい……あら!杏(あんず)ちゃん!
ごめんなさいね今起こしてくるから」
出てきたのは友達…由奈(ゆな)のお母さんだった。
家の中から由奈を呼ぶ声が聞こえて、しばらくして由奈のお母さんが顔を出した。
「ほんとだらしなくってごめんね
由奈の準備済んだら車で送るから、中に入って待っててもらっていい?」
「いえいえ全然
なんか、むしろすいません」
由奈とは小学校からの付き合いで、由奈お母さんとも仲が良い。
だからこそうちのお母さんのように取り憑かれて欲しくなくて一時期避けている時期があった。
でも由奈がふわふわとしたマイペースな性格というのもあって、避けてるのも気付かずに仲良くしてくれるものだから今でもこうして続いている
リビングのソファへ座ると由奈お母さんがオレンジジュースを出してくれた。
「杏ちゃんはしっかりしてるわねぇ
それに高校生になってさらに美人さんになって!」
「いえい…「ママ!杏にセクハラしないで!」
私の言葉を遮って飛び出してきた由奈に後ろから頭をわしゃわしゃとされる
「ちょ、由奈、」
わしゃわしゃとした次は整えるようになでなでとする…私は犬か何かか…?
「杏の頭良いなー
私もショートにしようかなぁ」
そういう由奈の髪はふわふわ癖っ毛のロング
「頭って……
昔短くして大変だったじゃん」
そう、小学生の頃に由奈は一度ショートにしたら見事に爆発して大変だった。
雨の日は本当に悲惨だった。
「うー」と頬を膨らませながら髪をとかす由奈の姿はなんとも様になる
「由奈、早く食べちゃいなさい」
「はーい」
うん。なんていうか、理想の家族像だ。
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