見えないモノに恋する私。
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私は昔から、見えないモノがよくみえる。


幽霊、妖の類のもの、妖精や小さいおじさんだって昔から目にしていた。





でもそういう者達と言葉を交わしたのは幼少期の一度だけしかない


幼稚園の頃、おばあちゃんが亡くなった。


おばあちゃんは亡くなる直前までブツブツと何かを唱え、そして私によく言ってくれた言葉がある

「人の形をしていないものには、何があっても声をかけてはいけないよ。」


幼い私は“鬼”が一番怖くておばあちゃんが言う言葉をしっかりと聞いて、たとえ人に近い形をしていてもどこか半透明だったり体の一部が欠けているものに声をかけることはしなかった。

それと同時に動物にも一切目を合わせず、テレビの中に映るキャラクターですら怖かった



おばあちゃんのことを変わり者だと思っていた両親は、おばあちゃんに何かを吹き込まれて私がおかしくなってしまったと思っていたようでおばあちゃんと2人でゆっくり話せたことはない。


でもおばあちゃんが残した遺言は全て私に当ててのものだった


私の体質について全て記しており、幼いうちは私を決してひとりにしてはいけないこと、死んだら棚の奥にあるお札を玄関に貼ること、他にもびっしりと3枚分ほど書かれていた。

両親も怖いことが書かれていたからか、自分たちが他と違うことが面白かったのかわからないけどおばあちゃんの言う通りにして私を守ってくれた。



おばあちゃんの葬式はひっそりとやると言っていたのに私の目にうつるのは大勢のモノ達。


特に鬼が多かった。


それがすごく怖くて、ずっと両親にくっついていたけれど身内が亡くなれば動かなければいけないのは身内。


親戚の子と遊んでいてねと言われて塗り絵を渡された



他の子よりずっと大人しかった私は歳の近い子とは全く合わず、ひとりですみっこにいた。



その時だった。

腕をくいっと引かれ、黒いモヤがにっこりと私に微笑みかけた。



『キミはボクと同じでひとりなの?』


独特な声が周りの雑音をかき消して私の耳に届いた。

初めて声をかけられた。


怖い怖い怖い

でも、なんだかみんな(人)より怖くない




そして私は頷いてしまった。



『じゃあ、イッショに外で遊ぼうよ。
ボクはキミとお話したいんだ』



ドキドキした。

両親に内緒でこっそり家を出ることも
人じゃないものと言葉を交わすことも

田んぼ道を黒いモヤに手を引かれて歩いた。



どんな話をしたのかは覚えていないけど会話することはとても楽しかった。

でもどんどん私の知らない世界に引き込まれていった。


外もすっかり暗くなって不安になって私は泣き出してしまった。


「うっふぇ、おうちに、帰りたいっ


『どうしてだい?ボクといるのはつまらない?』


「だっ、てモヤさんは、うぅっ、私をどこにっ、つれてくの


『キミはひとりぼっちなんだろう?
ボクがキミを連れて行ってあげるんだよ。
そしたらボクもキミもひとりじゃない
キミもそれを望んでいたじゃないか』


「パパと、ママに、会いたいっ


優しく、優しく私に付いていた黒いモヤは私を連れて行くために心の隙間につけ込んで支配しようとしていた。

私が本格的に声を上げて泣き出すと、私のカラダ全体を包み低い声で『離さないよ』と笑った



完全に飲み込まれる寸前、遠くから私の名前を呼ぶ両親の声が聞こえた。


その声に必死に応えて、一緒に来ていた御寺の住職がお塩を撒いて黒いモヤを払ってくれた


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