魔法使いの小さいオッサン
[芽生え](1/10)
夜が明けたばかりの街は、静寂に包まれていた。
水たまりは朝日に照らされ、幻想的な靄を生み出している。
可奈の運転するラパンは、雨上がりのアスファルトを軽快に走った。
相沢は、後部座席でぐったりしている。
「大丈夫?もうすぐ着くよ。」
「はい・・すいません。」
可奈は市民病院の、急患受付に入った。
早朝ということもあり、他に患者の姿は見えない。
待合室で熱を測ると、40℃の高熱だった。
相沢はすぐに診察してもらい、風邪と診断された。
疲れが溜まっていたことと、寝不足が原因だという。
相沢によると、猫を可奈の車の下で見つけるまで、数時間、雨の中探し回っていたらしい。
それに、可奈が酔っ払って自転車置き場で絡んだ日。
とある家から犬が産気づいたとの知らせを受け、夜通し犬のお産に付き合っていたとのこと。
可奈はそれを聞いて、小さくなった。
医者によると、薬を飲んでゆっくり休めば大丈夫とのことだ。
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