魔法使いの小さいオッサン
[猫と隣人と](1/11)
テレビの天気予報では、1日中雨の予報が出ていた。

それを律儀に守るように、可奈の帰宅時間まで雨は降り続けた。

広げた傘からは絶えず水滴が落ちてきて、やがて足元のアスファルトに吸い込まれていく。

街頭は、雨というフィルターのせいで鈍い光を放っていた。

今週は、とにかく働いた。

帰宅時間が終電の日も、少なくなかった。

せっかくの住みやすいアパートも、ただ寝るだけの場所になっているが。

その甲斐あって、可奈のプレゼン資料は、上司が絶賛する出来となったが。

もちろん、上司のダメ出しを前向きに考えさせたり、投げ出そうとする気を抑えたり、清水の『ほんの少しの』サポートも大きかった。

重い体を引きずって、ようやくアパートの前まで辿りついた。

自分の車に何となく視線を向けると、車の下で何かが動いた。



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