短編小説です
[打ち明ける](1/3)
【打ち明ける】リツアンナ
〜リツの本音〜




















「私じゃダメ?」



10分前のアンナの言葉が
頭の中でグルグル回ってる


あれは一体、どういう意味だろう

いつもの冗談?

それとも本気?

その言葉を発せられた時

俺はアンナの言ってる事の意味を
理解するのに少し時間が掛かってしまった。

頭の中をフル回転させて
なんて答えるのが最善か迷っていると

アンナはいつものように

「なーんてね、笑」

そう言って笑うと
テヘッ♪と悪戯っぽく舌を出して
すぐに前を向いてしまった。



俺はどうしようもない位に意気地なしだ

もう何ヶ月も前からアンナに対して
淡い恋心を抱いているのに

いざ本人を前にすると何も言えなくなる。


いつもアンナに会うと
今日こそはちゃんと言おう

ちゃんと気持ちを伝えよう

そう思っているのに、やっぱり言えない。


付き合っている彼女に対しても同じだった

他に好きな人がいるのに
それを伝える事が出来なくて

何ヶ月もズルズルと
無駄な時間を過ごしてきた

別に嫌いになったわけじゃない

むしろまだ好きだし良い子だとも思う

料理だって上手だし
掃除、洗濯、洗い物、家事全般を
完璧にこなす彼女は

お嫁さんにするなら最高の相手だと思う


だけど違う、何かが違う。


何が違うんだろう?

何がそんなに引っかかっているんだろう?

ずっと心の中でモヤモヤしてて
気持ち悪かった。


一緒に笑い合ってても

一緒にご飯を食べてても

手を繋いで抱き寄せて
甘い口づけを交わしても

同じベットで同じ毛布に包まって
何度肌を重ねても

2人で一緒に眠りに就き
朝、目が覚めて隣を見た時

何故か心の中に罪悪感が込み上げる。



そんな自分が嫌だった

そんな自分が許せなかった。


俺が好きなのは彼女であって
他の誰でもない


好き、好きじゃない、好き、好きじゃない


アンナに会う度に混乱してた。



でも心の底では気付いてた

俺が好きのはアンナだって事

気づいてるクセに知らないフリをして
笑って嘘をくり返す。


最低、最悪、ろくでなし


心の中で自分を罵って
嘘で塗り固められた笑顔を

彼女にもアンナにも振り撒いた。



そんな自分に吐き気がする。







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