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隆久side
一瞬何が起きたのか、わからなかった。
視界が一転し、目の前には天井を背景に妖艶な、まるで絵画や神話に出てくる美女のような少年がいた。
だが、その欲情した顔には微かに苦しみと悲しみ、焦燥感が滲んでいるのを確かにこの目で私は見た。
こんな幼い少年がする表情ではない。
「俺…我慢できないよ」
震える唇で紡がれた悲痛な言葉にハッと我に帰り、急いで上に覆い被さるような状態のアキさんを引き剥がした。
「アキさん、貴方…」
「おねがっ、もう…むりなんだ…っ」
相当我慢していたのだろう。
今までどんな事をされてきたのかが、浮き彫りになって現れる。
「落ち着いて下さい。貴方が苦しむだけですよ」
「されない事の方が、ずっと苦しいっ」
「此処に来た時点で貴方はもう、奴隷じゃないんですよ?」
「違う、違う違うっ…違う!
もう、それしか生き方を知らないんだっ」
声を荒げ、『違う』と繰り返す痛々しい姿を、あの方達が見たらどう思い、どうするのだろうか…
冷えてしまったのではないかと思い、触れた肩は…
熱かった―
P.50
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