05(1/9)
カツカツカツ、
前方から響く足音、藍色の男だろう。
此奴も紫の男もさっきとは違う、同じようなモノを纏い始めた。
何処まで俺をコケにするつもりだ?
道具に成り下がった人間への、同情か?
だとしたら余計にいらない。
俺に対する一番の侮辱だ。
ホント、嫌気が差す。
「お前、本気で言ってんの?」
「嘘で、言うと思い、ますか?
現に、俺はアナタ方に買われた。今の所有者はアナタ方だ。
奴隷は、奴隷。
人の下僕、そう、叩き込まれた、ただの道具だ」
どうして、そんな顔をする?
哀れむような、悲しむような、苛立ちさえ見える不思議な表情。
でも実際、ここ数年で、じっくりと、忘れる事のないように、ひたすら同じ行為を、同じ主従関係を頭に、躯に覚えさせられた。
そんなのも『俺』なのに、それを否定する目の前の現実。
俺が、現実から逃げたのって、何時だっけ?
P.21
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