この事故、大したことありませんので……
[プレゼント](1/5)



明さんと会う
日取りや行く店も決まり、

意気揚々と大学に向かう途中、
俺は小さなミカン箱に
入れられた1匹の黒い毛並みの
子猫を見つけた。



俺の部屋はペット禁止なので
もちろん飼えないが、
あまりに可愛かったので、
抱き抱えて大学まで運んだ。



今日はゼミの日だったので、
研究室には皆が来ていた。



「あれ、
お前猫なんて飼い始めたの?」



デスクに座って
難しい本を読んでいた追分が、
俺に気付きそう言ってきた。


「あ、お前帰って来てたんだ」


「ああ、落ち着いたからな。

ばあちゃん、
安らかに天国に旅立ったよ……」


「そうか……。

亡くなったのは残念だけど、
良かったな」


「身近なひとが亡くなったのが
随分久しかったから、
喪失感が半端なかったけどな。

死というものを、
リアルに感じたよ」


いつもしんどそうな追分が、
今日はいつになく
しんどそうに見えた。


「それで、子猫だよ。

そんなの連れてきていいのか?」


「道端に箱が置いてあって、
そこに入ってた。

誰か飼えるやつ
いないかと思って……」


俺がそういうと、
子猫がミャアと鳴いた。



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