隣の上司はよく食う上司だ
[17、隣の上司の苦悩ーーー水沢海斗side](2/16)



「……笹原と、上手くいったんすね」

「は、?」


坂口に会社のエレベーターでそう言われたのは、由香が帰ってきて3日が経った頃だった。



ちなみに由香は出勤はしておらず、退院後1週間は休暇をとるようだ。その方が俺も安心でいい。


それはともかく、若干恨めしそうに俺を見る坂口。おいおい、そんな目で見るなよ。上手くいってるって……なぁ…………



「……隠せてないですよ、にやついてるの」

「…………」……なぜ、バレたし。



口元を手で覆って隠したはずなのに、あっさり見破られてしまった。透視能力でもあるのか坂口。その能力をもっと仕事で生かせないのか坂口。


というか口元が緩むのは……仕方がないだろ。


由香が帰ってきてからというものの、俺の生活は色を取り戻したんだから……っていうと大袈裟かもしれないが、ざっくり言うとバカップルを無事再開。

入院生活で様々なネジが緩みに緩みきっているのか、普段ツン8割デレ2割くらいの由香が、デレ2割増しくらいの態度をとってくるんだ。そりゃあ、俺の口元も2割増しで緩む。


だってアレだぞ?あの由香が、(俺の懇願の結果)いってらっしゃいのキスとかしてくれんだぞ?あ、キスって深いやつだから。そこんとこ、よろしく。

危うく玄関の床をベッドと勘違いしてあんなことやこんなことするところだった。いや、実際しかけた。俺のブカブカのTシャツ着てたから裾から手を入れてこう……「すいません、全部口に出てますから部長」


「……あぁ、悪い悪い」ノロケて。


「悪いって思ってないですよね!?俺の豆腐メンタルズタボロです返してくださいよ!!」

「返すのは豆腐メンタルでいいのか?どうせなら人生やり直して鉄製のメンタルとかの方が良くないか?」

「死ねってことですか!?俺に死ねって言いたいんですか!!?パワハラだ!これは絶対パワハラ!!!」

「……お前なんで朝からそんなテンション高いの」


……いや、ある意味低いのか?なんか目死んでるし。傷心中みたいな顔してるし。あ、俺のせい?知ってた。


それはともかく、確かに俺は今幸せ。何てったって最高の嫁が家で待ってる訳だし。……だがしかし、同時に悩みもあるわけで。












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