隣の上司はよく食う上司だ
[17、隣の上司の苦悩ーーー水沢海斗side](16/16)



「なに、相談って?」

「いや…………てか、兄貴ちょっと席外してよ」

「お前その間に由香に何する気だ許さねぇ」

「ちょっと!まだ何もしてないし何もする気ないし!!やめて1回拳オロシテ」

「………お前には前科があるからな」

「前科………?あぁ、あれか水族館のやつ??あんな手握ったくらいで前科だなんて、……って、うぐっっ、、……ま、待って1回待って、胸ぐら離し、」

「手握ったくらい、ねぇ?お前いい度胸してんなぁ、あぁ??」

「海斗さん何マジギレしてるんですか本当1回待ってあげてください」

「キレるのは当たり前だろ。由香に触れていいのは俺だけだし。なのに、こいつときたら………」

「悪かったって!!わかった、わかったから!相談してる間、由香ちゃんに指1本触れない!半径一メートル以上近づかない!!嘘ついたら針千本でも万本でも飲ませばいい!!!」

「はぁ?」


指1本触れないのは当たり前だろ。それより半径一メートル?もっと離れろよなんでそんなに近づくわけ?

………なんて、自分でもみっともないくらいの独占欲。なのにこんなちっさなことでも、どうしたって面白くない。俺と類似した容姿をした弟なら、尚更。


「………海斗さん」


そんな俺を諭すように、由香は空いている方の俺の手を握り、引っ張る。


……そして耳元で一言、俺に呟いたのだった。



「………………………………………10分だけだからな。それ以上二人きりにはできん」



それだけ言って俺は悠斗の襟元をパッと離し、そのままリビングを出ていった。



「………………ったく、……反則だろ」



そして思わず、リビングの扉の前で頭を抱える。




ーーー大丈夫、……私はもう、海斗さんのものでしょ?




……なんて。
 


もう、本当に由香には敵わない。


「くそっ………………………」


……やっぱ、彼女に触れてぇ。


さっきはあんな格好つけたこと言ったけど、本当はもっと触れたい。抱きたい。

何度も言葉だけじゃ足りない、愛しさが込み上げてきて、溢れそうになって困るから。それを、つい彼女にぶつけたくなってしまう。


あと何週間くらいで由香のケガ、治るかな……。
そうしたら、お前は俺のものってこと、身体でもわからせたい。この溢れそうな感情を、由香に教えてやりたい。毎晩毎晩、愛したい。

それにやっぱり、結婚したら子供もつくるだろ?何人欲しいかな、由香。どんな子供が産まれてくるかな……。あ、でもその前に新婚旅行か……


………うっわ、


なんだか、俺の幸せな悩みはまだまだ増えていきそうです。


でもきっと、どんだけ悩んだって由香となら幸せ。


だから、どんなこともゆっくり乗り越えていこう。





…………………とりあえず、俺はあと8分32秒を乗り越えなければいけないが。













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