隣の上司はよく食う上司だ
[13、隣の上司の弟](13/13)



「え、?な、な、なんで、泣いて……!?」

「…………いいじゃ、ないれすか…ぐすっ、……嬉しい、んだから」

「…………はぁ……なに本当……」


……可愛いすぎだっつうの


そう言って海斗さんは困ったように目を細めて私を見つめる。そして、追い討ちをかける。


「……で?返事は??」

「……………………それは、」

「……うん」

「……私も、海斗さんと結婚したいって、思ってます」

「……ん」

「だから…………………………、だから、元カレのことが片付いたら……その、…………私をお嫁さんにして、ください……」


“お願いします“


先程彼がやっていたように、私も軽く頭を下げた。その間に、こぼれる涙をぬぐう。

すると目の前から大きく息を吐くのが聞こえた。


「はぁぁぁぁ……良かったーー、断られたらどうしようかと……」

「断らないですよ……スゴく、嬉しかったです」

「マジ、良かった。………………小田のこと、一緒にさっさと片付けような」

「………………はい」


少し間を空けて答えた私を、海斗さんは不思議そうに見つめる。

そのときちょっとだけ、心が痛んだ


“一緒に“という言葉に。



……ごめんなさい、小田のことは来週私一人で片付けるんです。

そう心の中で呟きながら、貼り付けた曖昧な笑顔を彼に振る舞う。


そんな誤魔化しに気がつかず、海斗さんは笑顔に戻り残りのデザートをパクパク。


私はというとそんな彼を横目に見つつ、ネックレスの輝きに顔を綻ばせながら改めて自分を奮い起たせていた。
 


ーー来週、頑張らなきゃ



頑張って終わらせて、海斗さんと結婚するんだ。

なんだ、案外簡単にハッピーエンドを迎えられるじゃないか。楽勝楽勝。


そんな風に自分に言い聞かせて、私もデザートをパクリ。ん、美味しい。





そんな何日か後に無理難題な希望と勝算を抱いていた私の考えは






あっさりと打ち砕かれるのを、



私はまだ知らない










- 168 -

前n[*][#]次n
/372 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]