隣の上司はよく食う上司だ
[7、隣の上司の婚約者](2/7)

「はいはい、みんなどーもねー。」
「……。」


数時間前、柏木ちゃんから告げられた通り私の会社の社長が私たちのオフィスに来ていた。
社長はほぼ私たちのオフィスに来ることはなく年に2〜3回来るかどうか。普段は少し離れたビルの一画の別のオフィスにいらっしゃる。
そこではお得意先の接待をしたり新しい契約を成功させたり、

「きゃあ、社長ーー、今日も素敵ぃ!」
「そのネクタイ、とっても似合ってますぅ!!」

……こんな風に多くの秘書に取り囲まれてたりしてる。
実は私の会社の秘書課は社長と同じオフィスにある。そしてその秘書課に入るには条件がある。

「……30歳以下の仕事はできなくてもセクハラを許してくれる可愛い女子、ですよね。」

そう、柏木ちゃんが耳打ちした通り。
社長を取り囲む女子社員は全員20代のキャピキャピした女子たち。しかもスカートは超ミニ。
私たちのデスクの周りは一気にガールズバー感が漂う。いや、行ったことないけど。大奥とか言った方がいいのかな?

「お、笹原ちゃんじゃーん!元気してるー?」
「あ、はい。おかげさまで。社長も元気そうで何よりです。」

うん、でも昼間より夜の方が元気かなぁ!
なんて低空飛行墜落寸前でアウトなセクハラを堂々と言っておいて何も悪いと思っていない笑みを浮かべる社長。柏木ちゃんだけ言葉の意味を理解せず、『太陽に弱いんですかね?』なんて私に尋ねてくる。社長を引きこもりみたいに言わないであげて違うから。

このままだと社長が、
・若い女に取り囲まれているチャラ男
・セクハラをめちゃめちゃする奴
・しかも人を見た目で判断する男
と彼氏にしたくない3拍子が揃ってしまってるのだが、別に悪い人な訳ではない。

「笹原ちゃん、また胸大きくなった?」
「……。」

悪い人では…………。

ごほんっ……とりあえずイケメンなことは確か。しかもかなり若い。部長より3つか4つ上だ。

「それはそうと、そろそろ笹原ちゃんも秘書課に入りなよーー!笹原ちゃんのルックスなら即合格だよ??」
「……いえ、今の仕事にやりがいを感じておりますので、遠慮しておきます。」
「相変わらず釣れないなぁー、なぁ??水沢?」
「あ?」
「あれ、俺社長なんだけどー?」
「ごほんっ!すいませんでしたー、大江社長ー。」
「うわぁ、見事な棒読みー」

そう、そして部長とは同じ高校の先輩後輩だったらしく、オフィスに来たときには必ず仲良さそうに絡んでいる。













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