海底の一輪花
[展開](1/5)
「ソフィア様、今日のキッシュ美味しいですね。
お芋を、大きめに切ったのは正解でしたね、
…ソフィア様?」
ソフィア様の家政婦をやって約3週間が過ぎた。
早いものだ。
いつものように一緒に晩ご飯を頂いていると、ソフィア様が黙ったままでいるのに気づいた。
「ルシア。
私、あなたを手放すことはしたくないわ。」
…手放す?
今から話されることは、決して良いことではないのは、安易に想像できる。
自然と体が強張る。
「それは、どういう」
「でも、ルシア。
あなた、後悔してるのね。」
「こう、かい?
い、いいえ!
ソフィア様、私ソフィア様に仕えて後悔なんぞしたことはありません!!
幸せです!ルシアは、まごうことなき幸せ者です!」
「ちがう、そうじゃないわ。
隣国のことに関してよ。」
「…それ、は。
しています。
後悔ばかりしています。」
「そう。
申し訳ないけど、わたし、
そんな中途半端な気持ちで家政婦をやられても気分が悪いの。
だからルシア。
あなたを解雇するわ。
明日の朝には出て行ってちょうだい。」
「なっ、?!」
「聞こえなかったの?
明日の朝には出て行って。
今日のうちに荷物まとめなさいよ。
わかったわね。」
唐突で、言葉を失う。
「ソフィア様、わたし、
ソフィア様の家政婦として精一杯
努めてきたつもりでした。
だって、後悔してもしょうがないことではありました。
でも、後悔しないことの方が、私にはつらく思えます。
だって、大好きだったのっ、…。
後悔するのは、そんなに悪いことですか…。
…もう、中途半端だと思われるようなことはしません。
だから、ソフィア様、
ソフィア様まで、わたしのこと、見捨てないでっ…」
「… あと洗い物、よろしくね。」
どう、してっ…!
これも、罰ですか?
みんなを裏切った?
静かに席を立つソフィア様の背中は、
いつもより小さく、悲しそうに見えた。
そのことを不思議に思ったけど、
頭が追いつかなくて、
なにも言えなかった。
静かに洗い物を済ませて、荷物をまとめた。
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